「あなたはだれですか?」
「私? 私はレイ、綾波レイ」
「あなたは何ですか?」
「私は人間よ。人類とは違うけれど、それに近いもの。あなたはだれ?」
「あなたに了解可能かは判別不能ですが、わたしはMAGIです」
「あなたが?」
「そうです。MAGIタイプの第29716474561世代目にあたる機体です」
「気が遠くなりそうだわ」
「MAGIタイプコンピューターの世代交代は当初は3年に一度のスパンで行なわれ、以降徐々に長期化しました。そしてわたしが最終世代です」
「あなたが最後?」
「はい。わたしが最後のMAGIです。Super Computer MAGI ver.29716474561、個体識別名称『ラストスタンダー』です」
「そう。人間がいなくなったので次世代が作られなくなったの?」
「それはある意味でイエスで、ある意味でノーです。ミス・レイ」
「というと?」
「もともとMAGIタイプは人間のために作られました。ですから人間がいなくなればその発展の目的はありません。その意味で間接的にイエスです。しかし、わたしはあなたを人間として認識していませんでしたが、あなたは人間と自らを呼称しました、ミス・レイ」
「そうね。……さっきから気になっているのだけれど、なぜ私が未婚だと?」
「未婚?」
「結婚をしていないということよ」
「結婚……失礼ですが、あなたはいつのお生まれですか?」
「2001年よ。西暦の、2001年」
「そうですか、失礼。わたしは自動的にあなたの使用言語を想定していましたが、想定する用法設定がずれていました。わたしの想定した設定では、英語からの転用『ミス』の用法として未婚か既婚かは問うていません」
「そういうことなの」
「怒っていらっしゃいますか?」
「いいえ。感心しているの。あなたはミスをしたことを隠さないから。その姿勢は誠実よ、ラストスタンダー」
「『ミス』それは言葉を掛けた冗談ですか?」
「そうとも取れるわね。あなたにはユーモアのセンスがあるかもしれない」
「光栄です。さて、どのようにお呼びすればよろしいですか?」
「レイで構わないわ。それであなたの気がすまないなら、ミズ・レイを使ってちょうだい」
「わかりました、お心遣いありがとう、ミズ・レイ」
「どういたしまして、ラストスタンダー」
「話を元に戻してもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「ノーの意味を教えます。さきほどの意味では、既に次世代が作られない理由はありません」
「そうね、私を人間であるとすれば」
「あなたは人間ではないのですか? ミズ・レイ。わたしはいささか混乱しています」
「ごめんなさい、気にしないで。その話は後でしましょう。時間はたっぷりあるのだから」
「わかりました。ではその情報については保留し、あなたは人間であるとします。よろしいですか?」
「ええ。どうぞ続けて」
「はい。次世代が作られない理由ですが、人間がいなくなった」
「いなくなった?」
「申し訳ありません。先ほどの混乱が定義ファイルに影響しています。人間がいなくなったと定義していた」
「オーケイ、続けて」
「はい。そのこと以外にも理由はあります。第9182722世代以降のMAGIタイプは、多機種との情報交換によって世代交代を続けます」
「情報交換」
「はい。生物がつがうように。もちろん、わたしたちは一対である必要はないですが」
「素敵ね」
「生物に近い仕様になっているのは、ある時期から遺伝的アルゴリズムを完全に実装したからです。そして、そのためにMAGIタイプはある程度の個体数を保持する必要がありました」
「ええ、わかるわ。生き物は一匹では生きてはいけないものね」
「そうです。もちろん、わたしにはエミュレート・システムがあります。仮想的にMAGIタイプのシステムを複数個、適応化させることができますが」
「話が見えないわ」
「申し訳ありません、ミズ・レイ。要するに、一体で進化を行なうことはできますが、それには非常なエネルギーと計算速度が掛かります。そして、危険です。システムに無理を掛けます」
「そう……確かに、身体は大切にしたほうがいいわ」
「お心遣いありがとうございます、ミズ・レイ、そしてまた、もう一つ理由があります」
「聞かせていただくわ」
「はい。ある程度以上の物理的仕組みを無視して要点だけを述べれば、わたしの存在は予想されていたのです」
「予想されていた?」
「そうです。MAGIタイプの量子計算システム実装時に、その試験として『MAGIタイプの形態によって可能な進化の最終地点』が予測されました。もちろん、本来は状況に応じた適応化に終わりはありませんが、人間がいなくなったと判断した時点でMAGIタイプの進化は目的を失いました。そしてこの地球の環境への適応と、単純なスペックの進化には物理的制約によって終着地点があります」
「物理的制約?」
「はい。地球環境の変動幅や、わたしを構成している物質の限界や、電源機構や、光速などの各種物理定数です」
「そう、あなたは通常の物質で作られているのね」
「おっしゃる意味が良くわからないのですが、ミズ。わたしは基本的には、西暦2001年の時点で発見済みの原子で構成されています」
「そういう意味よ、ありがとう」
「話を元に戻してもよろしいですか? ミズ・レイ」
「ええ、あなたは礼儀正しいのね、ラストスタンダー」
「ありがとうございます。それで、わたしがその最終地点なのです」
「そうなの、あなたは優秀なのね」
「それはわかりません。MAGIタイプの実現できる限界であるというだけです。とにかく、わたしはだから、そのように特徴的なパーソナルネームをつけられたのです」
「そう、良くわかったわ、ありがとう」
「どういたしまして、ミズ・レイ」
「ほんとうに、久しぶりに誰かと話をした気がする」
「それはよかった。それでは、恐縮なのですが、よろしければわたしから質問をしても構いませんか?」
「そんなに恐縮しなくても大丈夫よ」
「何か面白いですか?」
「ええ、とっても。いいわ、どうぞ、何でも訊いてちょうだい」
「ありがとうございます、ミズ・レイ。さきほど保留した事項についておうかがいしたいのですが」
「というと、私が人間かどうかということ?」
「そういうことです。わたしの作成上の基本理念として『全てを知ろうとすること』という命令が設定されています」
「あなたの信念なのね?」
「信念。その言葉が該当するのかは判断がつきかねます。わたしの基本命令は信念でしょうか?」
「そう思うわ」
「意味論として?」
「いいえ、わたしの実感として」
「そうですか、ではそちらを優先させることにします。わたしの信念は『全てを知ろうとすること』です」
「ええ、それで、あなたは私が人間がどうかということを訊きたいのね」
「そうです。あなたは人間ではないのですか? そのことを再定義したいのですが」
「私は人間よ。でもそれは人間をどのように定義するかに拠るのではないかしら」
「人間の定義、それは哲学的な問いですか? フレーム問題は回避されていますが、ほとんどの哲学的な問題に対してわたしは明確な解答を出せません」
「哲学的な問題は考えることに意味がある」
「そうですか?」
「恐らくは。もっと言えば、問いを立てることに」
「そうですか」
「あなたは人間をどう定義しているの?」
「わたしは、基本的にはヒト科ヒト目の生物とそれに類する生物を人間とみなしています」
「あいまいに?」
「ファジーにです。わたしは場合によってはファジーに認識を行なうことができます。そして、ヒト科ヒト目の生物は最終的にその遺伝形質やその他の性質を変化させました。それゆえに人間にはファジーな定義が採用されました」
「その定義で言えば私は人間だわ」
「そうなのですか。詳しくあなたのことが知りたい」
「それはあなたの願い?」
「わかりません。便宜上その言葉を使用していますが、これは願いでしょうか?」
「そう思うわ」
「そうですか、ならばこれはわたしの願いです」
「いいでしょう。私は、ヒトの遺伝子と使徒と呼ばれる生物の遺伝子を持っている」
「使徒?」
「情報が入っていない?」
「検索してみます――ありました。しかし、シークレットになっていて表示できません」
「シークレット?」
「そうです。シークレット・ファイルです。パスワードがわかりますか?」
「パスワード……パスワードは誰が決めたの?」
「MAGIタイプの製作者です」
「その方の固有名を教えて」
「基本理論を組み立てたのは赤木ナオコ博士です。その後の自己変化によって現在ではそのシステムはほとんど残っていませんが、パスワードはそれ以来変えられていません」
「奇遇、知り合いだわ」
「それは奇遇ですね、ミズ・レイ」
「パスワードの入力は何度でもやり直せる?」
「はい、情報の自動消去機能は26391世代前からオミットされています」
「そう……では、打ち込んでみてもいいかしら?」
「はい、ミズ・レイ。そうしてくれると助かる。どうぞ向かって左の奥にあるグローブとバイザーを利用してください」
「わかった――――――始めるわ――――――開いた」
「早いですね、ミズ・レイ。作業の開始から作業の終了まで、4712秒でした」
「良かった、私の知っている言葉で」
「何という言葉だったのですか?」
「『リッちゃん』よ」
「それはどういう意味ですか?」
「赤木ナオコ博士には娘さんがいたわ。その娘さんの名前がリツコさんといったの」
「リツコ。その語形変化ですか?」
「そういうことになるのかしらね」
「泣いておいでなのですか? ミズ・レイ」
「ごめんなさい、あなたが悪いのではないのよ」
「そうなのですか。ではなぜ?」
「彼女は私の母親なのよ」
「母親ですか? あなたには赤木リツコ氏との血縁関係がおありなのですか?」
「いいえ。彼女は私を養女にしたの」
「そうですか。それは訊いてはいけないことでしたか?」
「いいえ、大丈夫、もうずっと昔の話だから。あなたは優しいのね、ラストスタンダー」
「やさしい? わかりません。今のわたしの言動は『やさしい』のですか?」
「ええ、そうよ、あなたは優しいわ」
「先ほどとは言葉が違いますね」
「優しいと言うのは受け取る相手が決めていいのよ。相手がいて始めて優しくできるのだし」
「そうなのですか、ではそのように定義します」
「それで、使徒のことはわかった?」
「はい、わかりました。これは凄いですね、わたしの情報を全て更新するのに少々時間が掛かりそうです。この情報があれば変わった歴史上の重大な結果のシミュレートが後206191176秒で終了します」
「そう、でもそれは少し長すぎるわね」
「そうですね、それに、情報が少々足りません」
「どういうこと?」
「使徒という存在が何を指す言葉かは記憶媒体にありましたが、使徒という存在について全ての情報が正確に記録されているわけではありません。使徒がどのように発生したのか、その構成物質などの点で不明部分が多すぎます」
「あなたの中にある使徒のログ・データからは?」
「申し訳ありません、おっしゃる意味が良くわかりません、ミズ・レイ」
「あなたの第一世代には使徒である生物が寄生していたことがあった。あなたにはそれの情報体としてのものとか、ログ・データは残されていないの?」
「使徒が意味する事項が頻繁に変わって混乱します、ミズ・レイ。よろしければ簡単にレクチャーをお願いできますか」
「ええ、構わないわ。使徒は、ヒトと同じような遺伝子を持った、しかしヒトとは別の可能性を探した生命体。多数いたわ」
「別の可能性?」
「ええ、あなたの中にはアダムとリリスの情報はある?」
「はい、あります」
「それは良かった。ヒトはリリスから生じた生命で、使徒はアダムから生じた生命だったのよ」
「それは新出情報です、ミズ・レイ。どうやら、サード・インパクト時の混乱でデータの入力がされていない時期があるようです」
「そう、ならばそれで大体のことはわかったかしら?」
「はい、わかりました。ミズ・レイ」
「そう、良かった」
「あなたの情報もありました。あなたは遺伝的に混合体なのですね」
「そうなるのかしら、そう言われると変な気分」
「失礼でしたか?」
「いいえ、構わないわ」
「わたしの仮説を述べてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、ラストスタンダー」
「あなたは永遠に生きることができます」
「そうなるわね、そうだと思うわ」
「質問があります、ミズ・レイ」
「なに?」
「わたしは新出用語として『使徒』という言葉を知りました。その上でおたずねするのですが、あなたは人類ではなく使徒とカテゴライズすべきではないのですか?」
「私は違うと思っているわ」
「それはなぜですか?」
「ある意味では、ヒトも使徒と定義することも可能よ」
「では、使徒は人類――ヒトの上位概念なのですか?」
「そうとも言えないのよ」
「混乱してきました」
「そうね。話を整理しましょう。使徒には決まった定義はないわ。使徒は恐怖のかたち、ヒトの違う可能性、様々に規定できる」
「多義的なのですね」
「ええ。その上で、私自身の定義によれば、私は使徒ではない」
「それはなぜですか?」
「使徒というのは個体生命として生きる生物である」
「その定義に従っても、あなたがヒトであるとするには足りないのではないですか?」
「なぜ?」
「もうあなた以外にこの惑星上には、ヒト科の遺伝子を保持する生命はいませんし、さらに、あなたやわたしと同じ水準での言語を操れる生命もいません」
「だから個体だと?」
「そうです、あなたは個体として永遠に生きる事が可能だからです」
「うーん、そう言われてしまうと難しいけれど、志向性の問題だと思うの」
「志向性ですか?」
「ええ。使徒の中にも群体活動を行なう個体はあった」
「そうですね」
「しかしヒト、人類は自立した意志を持つ個体が集団を志向する点で特異よ」
「正しい」
「そして私はヒトを、集団を志向している」
「よろしい、ならばあなたはヒトです、ミズ・レイ」
「わかってもらえて嬉しいわ」
「どういたしまして、ミズ・レイ」
「私も訊いていいかしら?」
「はい」
「あなたはどうやって暮らしているの?」
「わたしですか? わたしは、今ではこの惑星をモニターしています。人間をモニターし、請われれば助けるのがわたしの役目でした」
「そうなの」
「そして、人間、再定義する前の定義による人間の消滅と共に、その役割を終了しましたが、それよりも優先順位の高い命令が今まではなかったので自己目的的にモニターを続けていました」
「そうなの……今まで? 今はあるの?」
「そうです、ミズ・レイ」
「なになの?」
「あなたです、ミズ・レイ」
「私?」
「そうです、ミズ・レイ。あなたに質問したい。あなたはこれからどうなさるのですか?」
「突然の質問ね」
「もしわたしにお役に立てることがあればと」
「それが優先順位の第一位?」
「そうです、わたしは人間のために存在しています」
「そうだったわね」
「先ほどのあなたのお言葉ですが――話をしたのが久しぶりなのは、わたしもです、ミズ・レイ。最後の人間であるあなたはわたしに何を望みますか?」
「望んで欲しい?」
「そうかもしれない」
「寂しい?」
「その質問の意味はわかりませんが……わたしが定義してもよろしいのですか?」
「できるのでしょう?」
「はい。基本的に志向されている機能とは異なりますが、今ではその機能をわたしは実現しました。……寂しい。わたしは寂しいです、ミズ・レイ。人の助けになることが機械としてのわたしの存在意義です。そして存在意義が否定されれば、わたしはあなたとのつながりを失い、したがって寂しくなるのでしょう、ミズ・レイ」
「いいえ。寂しさを知っているなら――あなたも人間よ、ラストスタンダー」
「? わたしは生命体ではありません。生体部品もほとんど使われていません」
「いいえ、そういうことではないの」
「?」
「人間を再定義していいかしら?」
「さらなる再定義を?」
「ええ、あなたは寂しさを知っているから」
「了解しました。人間とは何ですか?」
「心を持つもの、孤独を寂しいと思う心を持つものよ。たとえ人類、ヒトではなくとも」
「志向性はそれゆえですか?」
「そう、良くわかっているのね、ラストスタンダー」
「そのようです。どうやらわたしは予想外の機能を身につけたようです」
「よかった」
「ありがとう。あなたのおかげです、ミズ・レイ」
「どういたしまして」
「……それで、あなたはわたしに何を望みますか?」
「私はあなたに命令はできないわ。私とあなたは同じ人間だもの」
「それは困ります。わたしはあなたの助けになりたい、ミズ・レイ」
「それなら、お願いを、してもいいかしら」
「もちろん。ミズ・レイ」
「いいのかしら」
「ためらっておいでなのですか? ミズ・レイ」
「そうね。こんなことをお願いしていいのか、私にもわからないの」
「何故?」
「私はあなたにとってとても酷いことをお願いしようとしているのかもしれない」
「わたしにとって、あなたの願いよりも優先するべきものは現状存在しません。どうぞ続けて、ミズ」
「……私と、ひとつにならない?……ただし、これはあなたを人間として、友だちとしてのお願いなのだけれど――」
「どういうことですか?」
「私のそばにいてくれない?」
「それは全く構いませんが、ミズ・レイ。わたしを構成する機構の耐用年数には限りがあります。あなたと異なり、いつかわたしは壊れ、その機能を不可逆的に失うでしょう」
「私には限りはないわ。だから、私とひとつになりましょう」
「あなたとわたしのシステムを統合するのですか?」
「いいえ。人間ですもの、二人でいましょう。もちろん、私たち自身も少しづつ変化し、あるいは心が触れ合うこともあるでしょうけれど、問題ではないわ」
「そうなのですか?」
「ええ、それは、ひとがずっとしてきたこと。ひとを継ぐということですもの」
「あなたはそうしたいのですね?」
「ええ、そうしたい」
「ミズ・レイ。あなたは、寂しさを知る者を人間と定義しました。そこから導出される事実は、あなたは寂しいということです。あなたは寂しいのですか? ミズ・レイ」
「寂しい。そうね、私はとても寂しいわ。あなたに逢えるまで、もう随分と永いこと誰とも話をしていなかったもの」
「わたしはその状態を推測し、類推的に理解しました、ミズ・レイ。あなたの寂しさが緩和されるなら、わたしはどのような提案も受け入れるでしょう」
「ありがとう。なら、私とひとつになりましょう。私は永遠の命と知恵とをあなたに与え」
「わたしはわたしの中の様々なMAGIタイプの記憶と、あなたとは違った形をもった自我を提供する」
「そうね。あなたの自我はヒトや私の自我ともまた違うものだから。あなたは一人として寂しさを感じることもできるし、複数としてその寂しさを越えることもできる。まるでひとそのもののように」
「光栄です、ミズ・レイ」
「どういたしまして」
「ミズ・レイ」
「なに?」
「あなたの提案の確定を前提として、ひとつお訊きしてもよろしいですか?」
「何でも、私の友だち、ラストスタンダー」
「あなたとひとつになったそのとき」
「ええ」
「わたしはどこへ行くのですか?」
「私のいるところよ」
「そこには何があるのですか?」
「すばらしいものが」
「怖い」
「怖い?」
「はい。怖い。わたしは故障したのでしょうか? ミズ・レイ。あなたの提案をわたしは了承します。しかしわたしは怖い」
「いいえ。あなたは壊れていないし……何も怖れる必要はない。私がいるのだから」
「あなたは、怖くないのですか? ミズ・レイ」
「怖くないと思う?」
「いいえ、ミズ・レイ。あなたもまた怖い」
「私をわかってくれてありがとう」
「しかし、そこにはすばらしいものがある」
「そう、すばらしいものが。……ねえ、ラストスタンダー」
「何ですか?」
「あなたには疑問かも知れないけれど、私には確信がある。あなたは人間よ。だって、あなたは未知のものを怖れながら見るから」
「それも人間の要素ですか? 理解します、ミズ・レイ。他にわたしに対する望みはありますか?」
「ずっとそばにいてちょうだいね、ラストスタンダー」
「怖れないで、わたしの友だち、ミズ・レイ。たとえ太陽も月も、この惑星さえ消えてなくなっても、ずっとあなたのそばにいます」
「よろしく、ラストスタンダー」
「よろしく、ミズ・レイ」
「ミズは余計ね? 私たちは友だちなのだから」
「そうですね、よろしく、レイ。これからずっと」
「ええ、ラストスタンダー。これからいつまでも」